マティス「ブルーヌード」に見る、青の美とリズム

マティス「ブルーヌード」に見る、青の美とリズム

みなさんこんにちは。

本日はマティス晩年の代表作の一つ「ブルーヌード」についてご紹介します。

 

晩年のアンリ・マティスは、大病を患ったこともあり、体力の衰えから筆を手にすることが難しくなりました。
しかし彼はそこで創作をやめずに、新しい表現方法を見つけます。
それが、色紙を切って貼る「切り紙絵」という技法でした。


制作中のマティス 1952年 [MATISSE CUT-OUTS / Gilles Néret / TASCHEN より]

マティスの晩年の切り紙絵制作を支えた助手として、もっとも重要な人物はLydia Delectorskaya(リディア・デレクトルスカヤ)です。

マティスが闘病の末にベッド生活を送るようになった1940年代後半、
リディアは「マティスの手」として、切り紙絵制作に深く関わるようになります。


画室内のマティスとリディア 1953年 [MATISSE ジョン・ジャコバス 著 / 美術出版社 より]

 

マティスの晩年の切り紙絵制作を支えた助手リディアの手が作る彩色紙、マティスのハサミが刻む形──。
ふたりの協働によって、晩年の“切り紙絵”は誕生します。

その中でも1952年に制作された《ブルーヌード I〜IV》、そして同じ年の《たなびく髪の毛》は、JAZZシリーズと並び、マティス芸術の集大成とも言われるシリーズです。

深い青一色で描かれた女性の身体。
その形には、マティスが一生をかけて探し続けた「美のリズム」が宿っています。

 


ブルーヌード I(1952年)──静かな輪郭の中のリズム

ブルーヌード1

シリーズ最初の《ブルーヌード I》は、最も穏やかな印象の作品です。
脚を折り、身体を小さくまとめた女性の姿。
滑らかな曲線の中に、内面の静けさが感じられます。

青い色面が光を吸い込み、まるで静かな彫刻を見ているよう。
「形の静寂」がテーマになったような、美しい余白のある一枚です。

アンリ・マティス 「ブルーヌード I」アートポスター(フレーム付き) /  Henri Matisse “Nu bleu I” 絵画・名画[額入り]0

アンリ・マティス 「ブルーヌード I」アートポスター


ブルーヌード II(1952年)──動きを感じる身体

ブルーヌード2

《ブルーヌード II》では、構図が一気にダイナミックになります。
身体がねじれ、肩や腰のラインに緊張感が走る。
まるで一瞬のポーズを切り取ったような動きの美しさが印象的です。


同じ青でも、ここには生命の息づかいが感じられます。
ハサミで描かれたラインが、筆よりも生き生きと躍動しています。

アンリ・マティス 「ブルーヌード II」アートポスター(フレーム付き) /  Henri Matisse “Blue Nude II” 絵画・名画[額入り]0
アンリ・マティス 「ブルーヌードII」アートポスター

ブルーヌード III(1952年)──形が音楽のように響く

ブルーヌード3

三作目の《ブルーヌード III》では、形がさらに抽象化され、線がリズミカルに交差します。
まるで音楽を奏でるように、身体の輪郭がリズムを刻む。


力強くも軽やかなその形は、見る人の心に穏やかなリズムを生み出してくれるよう。

マティスが「絵画は視覚の音楽だ」と語った意味が、この作品を前にすると伝わってくるような気がします。

アンリ・マティス 「ブルーヌード III」アートポスター(フレーム付き) /  Henri Matisse “Blue Nude III” 絵画・名画[額入り]0
アンリ・マティス 「ブルーヌードIII」アートポスター

ブルーヌード IV(1952年)──純粋な形の完成

ブルーヌード4

シリーズの最後《ブルーヌード IV》では、形が最も洗練されています。
すべての要素が簡潔にまとめられ、青と白のバランスも心地よく、人の身体というより、形そのものの美しさを描き出しています。

この作品は4点の連作の中でも、切り紙の重なりが最も多いそうです。
原画では
白い背景にもデッサンの跡がかなり残されていて、マティスが試行錯誤しながらようやく辿り着いたフォルムなのだということが見てとれます。

またヌードといっても艶かしさというよりは女性的なフォルムの純粋な美しさのみを抽象した、といった印象で、洗練されたかっこよさのようなものが感じられます。

マティスが晩年にたどり着いた「見る喜び」「形の喜び」が、静かに息づいているように思います。

アンリ・マティス 「ブルーヌードⅣ」アートポスター(フレーム付き) / Henri Matisse “Blue Nude Ⅳ” 絵画・名画[額入り]image
アンリ・マティス 「ブルーヌードIV」アートポスター

たなびく髪の毛(1952年)──風を描いた切り絵

たなびく髪の毛

同じ年に生まれた《たなびく髪の毛》は、《ブルーヌード》と姉妹のような存在です。
けれどここでは、身体ではなく髪の流れが主役。
長い髪が風に揺れ、画面全体にリズムを生み出しています。


青の線がまるで風そのもののように動き、見ているだけで空気が流れ出すようです。
マティスの切り絵の中でも、特に軽やかで詩的な一作です。

アンリ・マティス 「たなびく髪の毛」アートポスター(フレーム付き) / Henri Matisse “The Flowing Hair” 絵画・名画[額入り]

青の中に生きる形たち

マティスにとって、青は「静けさと深さをあわせ持つ色」でした。


《ブルーヌード》と《たなびく髪の毛》は、単なる女性像ではなく、形・リズム・生命の調和を追い求めた結果です。
ハサミで描かれた線の一つひとつに、マティスの呼吸と感動が宿っています。
晩年の彼が紙と色で生み出したこの“青い奇跡”は、今もなお私たちの心を静かに動かし続けています。


インテリアに飾る「ブルーヌード」──日常に青の静けさを

マティスのブルーヌードは、アートポスターとして飾っても本当に美しい作品です。
深い青と白のコントラストが空間をすっきりと引き締め、静かな存在感を放ちます。

アンリ・マティス 「ブルーヌード I」アートポスター(フレーム付き) / Henri Matisse “Nu bleu I” 絵画・名画[額入り]
アンリ・マティス 「ブルーヌード I」アートポスター


北欧インテリアのようなナチュラルな部屋にも、モダンな空間にもよく合い、
日々の暮らしに「静けさ」と「リズム」をもたらしてくれます。

眺めるたびに、マティスの“青の呼吸”を感じられるはずです。
お気に入りの場所に、ぜひ一枚のブルーヌードを飾ってみてはいかがでしょう。

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